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新訳 ポー短編集



監 訳
畑 長年

翻 訳
河野英美子 田中友季子
佐宗佳奈 平松佳弘
ジングラス広美 山ア美紀

監訳者のことば
 畑  長年
 いまからおよそ二〇〇年前の一八〇九年、ポーは旅役者の子としてボストンに生まれました。
大ざっぱに言えば、滝沢馬琴が『南総里見八犬伝』を書き始めたころです。
三歳のとき父母を失い、リッチモンドのタバコ商人の養子となります。ヴァージニア大学に進みますが、賭博におぼれ(当時のお金で二〇〇〇ドルの借金をつくったそうです)一年で退学。養家との関係を絶って天涯孤独の身を放浪生活に送り、一八四九年、酒とアヘンにおぼれた極貧の一生をボルティモアで終えます。
 ポーの小説は『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』を除いてすべて短編ですが、死の神秘と恐怖を扱った『アッシャー家の崩壊』(一八三九年)、『赤死病の仮面』(四二年)、そして科学冒険物語とでも呼べる『モスクィの大渦巻き』(四一年)、人間の病的心理を象徴化した『黒猫』(四三年)はよく知られています。
 最初の推理小説『モルグ街の殺人』は一八四一年(推理小説の歴史は一八四一年から始まるといわれています)に発表されましたが、以来、『マリー・ロジェの謎』(四二年)、『黄金虫』(四三年)、『その男はあなただ』(四四年)、『盗まれた手紙』(四五年)と毎年一編ずつ推理小説を発表しています。
 ポーはこの五つの作品でそれぞれ異なったトリックを用いています。推理小説のトリックはこれがすべてと言ってもいいくらいで、それを見破るのもまた一興です。犯人を初めから読者に知らせてしまう『その男はあなただ』の手法は、あの『刑事コロンボ』で見事に模倣されています。
 さきほど、「よく知られています」と書きましたが、当時のアメリカではポーの文学は不当に冷遇されていました。その一方で、ヨーロッパでは早くから真価が認められ、作品はボードレールやマラルメの手で仏訳されました。
 イギリスでは、コナン・ドイルがポーのデュパンを模してホームズを作り出したことは、いまさら言うまでもないことです。
 訳出にあたって使用した原典は、Doubleday社の “Complete Stories and Poems of Edgar Allan Poe”ですが、『黄金虫』(暗号の部分)については Castle Books社の “Edgar Allan Poe Complete Tales and Poems”を参考にしました。

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