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The Adventures of Tom Sawyer
新訳 トム・ソーヤーの冒険


Mark Twain
マーク・トウェイン
1835-1910

監 訳
丸山元子
 
翻 訳
金崎悦子   小澤朱
石塚信子   平井麻希子
五井美幸   秋山志貴子
大槻伸子    

監訳者のことば
 マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』を知らない人は、まずいないのではないだろうか。『赤毛のアン』と並んで、児童文学における金字塔の一つと言えるだろう。それほどに有名な作品だ。では、誰もがみんな実際に読んだことがあるのかとなるとこれはまた話は別で、案外読んでいない人もいたりするのである。
 実はかく言う私もその一人で、きちんと最初から最後まで(しかもいきなり原書を!)読んだのは、今回が初めてだった。そして読んでみた感想は、「やっぱりすごい! 面白い!」だった。何が面白いって、子供たちのやることなすことすべてが「うん、あるある」と思えることばかりなのだ。トウェイン自身の子供時代がモデルらしいが、よくぞここまで鮮明な記憶があるものだと感嘆する。それほど、一つ一つの描写が細かく、生き生きとしているのだ。ことにトムやハック、そしてベッキーの心情を描写している部分を読んでいると、子供時代の気持ちや感じ方が怒濤のように甦ってきて、切なさやおかしさが込み上げてくる。そんなふうに、本書はある意味、黄金の子供時代の忠実な記録であるわけだが、それとともにまた、様々な経験を経てきた一人の男性が振り返る人生の哲学史でもある。そこがまた作品全体に重厚感と深みを与えている。名作と呼ばれる所以であろう。
さて、そのような古典を新訳としていかに甦らせるかだが、それについてはいろんな方法があると思う。まったくの現代物として訳すという方法。現代的感覚を取り入れながら、原作に忠実に訳すという方法、などなど。私たちは後者の方法をとった。台詞部分については古めかしくなりすぎず、またあまりに「今っぽく」なりすぎないように配慮した。それ以外の部分については、トウェインが今でも十分通用する新しい感覚を持っていたせいか、それほど工夫をしなくても訳すことができたように思う。ただ、かなり古めかしい表現が出てくることもあり、訳すのに少し苦労したことも事実だ。全体的には、大人の鑑賞に堪える文でありながら、その根底につねにユーモアを感じさせる、重すぎない作品に仕上げるよう工夫した。
 それ以外に注意したのは、既訳の文と表現が重ならないようにすることだ。重なってしまっては、せっかくの新訳の意味がなくなってしまうからだ。これだけ有名な作品になると、すでに素晴らしい訳がいくつも存在するわけだが、その中で特に多く読まれている訳については神経を尖らせた。とはいえ、そちらにばかり気を取られると、かえって統一性のないぎくしゃくした訳になってしまうので、最後はあくまでも「愉快な」作品になるように、トムと一緒に冒険を楽しみながら翻訳作業を行った。まだお読みでない方も、もう読んだよという方も、ぜひとも新訳で甦った愉快な世界で遊んでみてください。

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