この1915年から1919年という時期は、ウルフにとっては、世界文学史に残る作品群を発表し始める前のいわば習作時代で、長編第二作Night
and Day(夜と昼)の執筆時期とほぼ重なります。英文学史に新たな地平を拓くのだという自負、それが世間に受け入れられのかという不安、信頼する仲間からの高い評価に喜ぶ姿など、作家ヴァージニア・ウルフが基礎を確立する時期のリアルな感情をかいま見ることができます。ふつうの作品や研究書では読めない、大切な心の記録といえるでしょう。 また、この5年間は第1次世界大戦とその戦後期でもあって、世間を超越したような辛辣なコメントが飛び出したり、夫のレナードも関係した国際連盟設立の動きがふれられていたりと、歴史のウラ読み資料としても第一級のおもしろさです。E・M・フォースター、トマス・ハーディ、キャサリン・マンスフィールド、D・H・ロレンス、H・G・ウェルズ、T・S・エリオットといった有名作家はもちろん、経済学者ケインズのような世界史の教科書に出てくる人びとも登場してさまざまなことを語ってくれます。